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第43話

霧島弥生には食欲がなかったが、尾崎由奈の促しにより、彼女は何とかカフェラテを飲み終え、サンドイッチを何口か食べた。尾崎由奈は彼女がこれ以上食べられないことを分かって、無理強いはしなかった。

彼女は片付けを終え、再び席に戻ってきた。

「どう?少しは良くなった?」

「うん」

尾崎由奈は軽く咳をし、試すように言った。「それじゃあ、今日は帰ろうか?」

霧島弥生は何も言わなかった。

尾崎由奈は彼女の手を握り、決然とした声で言った。「行こう」

「うん……」

霧島弥生はまるで霧の中に迷い込んだような状態で、どちらの決断を下すにしても、誰かに背中を押してもらう必要があると感じていた。

彼女は立ち上がり、尾崎由奈と一緒に病院を出た。

交差点を曲がったところで、霧島弥生はある声を耳にした。

「でも、お母さん、私は彼のこと好きなの」少女の声は悲しげだった。

「黙りなさい!」それに応じるのは、怒りと辛辣さを含んだ女性の声だった。「何を言ってるの?あなたをこんな風に育てた覚えはないわ。彼に騙されたってわかってないの?」

「お母さん……」

「今回の件が終わったら、もう彼と付き合わないで。あんな貧乏人、あなたと釣り合わないわよ。そんな人と関わってるなんて知られたら、将来、いい相手なんて見つからないわよ」

女性の厳しい言葉に、少女は黙り込み、前髪は目を覆っていた。

霧島弥生はその光景を一瞥した後、視線を戻した。

尾崎由奈もその場面を見たようで、病院を出るとため息をつきながら言った。「あの女の子、まだ学生のように見えたわ。なんてバカなんだろう」

霧島弥生は何も言わなかった。

その時、彼女の携帯が震えた。

その音を聞いて、尾崎由奈はすぐに近づき、「電話が鳴ってるわ。瑛介からの電話じゃない?もしかして、彼、後悔してるんじゃない?」

しかし、画面に表示されたのは見知らぬ番号だった。

尾崎由奈は尋ねた。「誰?」

なぜか霧島弥生はこの見知らぬ番号に、何か予感を感じた。

彼女は数秒間迷った後、電話を取った。

「霧島弥生さんですか?」

少しぶっきらぼうな女性の声が電話の向こうから聞こえた。

この声には霧島弥生に覚えがなかった。「どなたですか?」

「私は江口奈々の友人です。話したいことがあるので、あなたに会いたいと思っています。住所は後で送ります」

そう言っ
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